民法講座 講座1

第1講 行為無能力(制限能力者)

@A学生(18歳学生)さんが、痩せたい一心で「飲むだけで痩せるダイエット薬」という通信販売の契約の申し込みを行なった場合や、Aボケの進んだB老人が、訪問販売で自宅のリフォーム契約をした場合や、B金銭の浪費癖があるCさんが簡単にローン契約をしてしまう場合などなど・・・。

本人の契約は自由ですが、この様な行動が頻繁に行なわれれば、その人の財産が危うくなってきます。ここで、民法という法律で「行為無能力」制度を設けています。そして、ABCの登場人物を「制限能力者」といいます。

未成年者・・・20歳未満の人を「未成年者」という(民法3条)。しかし、未成年が婚姻した場合は、「成年者」と同様となる(民法753条)。

未成年者が法律行為(契約等の行為)を行なうには、法定代理人の同意を得なければなりません(民法4条1項)。ここでいうAの法定代理人は、親権者(Aさんの両親)となります。
法定代理人の同意なしに契約をした場合は、Aさんまたは法定代理人が取り消すことが出来ます(民法4条2項)。
 Aさんまたは法定代理人が、通信販売会社に「契約の申し込みを取り消します」と意思表示をする事により、消滅させる事ができます。
しかし、例外に未成年者が同意なしに、法律行為を行なえる場合があります。
イ、 単に利益を得、又は義務を逃れる行為(民法4条1項但し書き)例えば、贈与を受ける行為。
ロ、 処分を許された財産の処分(民法5条)例えば、学費。
ハ、 目的を定めないで処分する事を許された財産の処分(民法5条)例えば、小使いを使う行為。
ニ、 営業を許された未成年者の営業に関する行為(民法6条)例えば、アルバイト。
@について言えば、Aさんの保護者である親が、Aさんの行なった法律行為を取り消すことが出来ます。

成年被後見人・・・精神上の障害により、事理弁識能力を欠く常況にある者(民法7条)。なお、家庭裁判所による後見開始の審判がり、成年被後見人となり、保護者として成年後見人がつけられる(民法8条、838条)。この成年後見人には、取消権・代理権・追認権が認められているが、同意権はない。
Aについて言えば、この制度を利用していれば、成年後見人が取消権を利用し、Bさんのおこなった法律行為を取り消すことができます。
ただし、成年被後見人の日用品の購入その他日常生活に関する行為については取り消す事ができない(民法9条)。
例えば、コンビ二で昼のお弁当を購入する行為まで取り消すことは出来ないということです。

被保佐人・・・成年被後見人ほどではないけれども、精神上の障害によって、事理弁識能力が著しく不十分な者として、家庭裁判所による保佐開始の審判を受け、保佐人がつけられる。保佐人には、取消権・追認権・同意権が認められ、手続きを経れば代理権も認められる(民法876条)。

被保佐人は、成年被後見人と比べ、保佐人の同意を得ないで出来る行為の範囲は広く、次の1〜10についての法律の定める行為について、保佐人の同意を得ないで行なった行為については、取り消すことが出来、その他の重要でない行為は取り消す事が出来ない(民法12条)。1、元本を領収したり、担保に入れる事 2、借金をしたり、保証人になること 3、不動産売買、重要な財産の売買 4、裁判を行なう行為 5、贈与や和解をすること 6、相続の承認・放棄・遺産分割を行なうこと 7、贈与または遺贈を受けることを断ったり、不利な条件で贈与または遺贈を受けること 8、建物の新築・改築・増築・大修繕を依頼すること 9、土地については5年、建物については3年を超える賃貸借契約をすること 10、その他、家庭裁判所が定めた行為。

被補助人・・・被保佐人ほどではないが、精神上の障害によって、事理弁識能力が不十分な者として、家庭裁判所による補助開始の審判を受け、補助人がつけられる。補助人には、特定の法律行為についての同意権、または代理権の双方またはいずれか一方がつけられる(民法14条3項)。補助人については、保佐人と同様、重要な行為については補助人の同意を得ないで行なった行為については取り消す事が出来、その他の重要でない行為については、取り消す事が出来ない。重要な行為については、補助開始審判により決定される。

よってBについて言えば、Cさんが被保佐人・被補助人制度を利用し、Cさんの行なった法律行為が、同意を得ないで行なった法律行為として、取り消す事ができるということです。

さて、今までは制限能力者の保護についての法律を解説しましたが、制限能力者を保護する反面、制限能力者と取引を行なう相手方は、いつ契約が取り消されるのか、不安な状態でいることとなります。そこで、この相手方を保護する法律もあります。
保護される法律には、催告権(さいこくけん)があります。相手方が1ヶ月以上の期間を定め、法定代理人・成年後見人に対して、取り消しの有無を追認するか否かを催告する事が出来ます。期間内に解答なきときは追認したものとみなされます。つまり、取り消す事が出来ない事となるのです。被保佐人・被補助人に対して追認の有無を催告した場合、期間内に解答なきときは、取り消したものとみなされます。
また、制限能力者が「自分は制限能力者ではない」とのウソをついて契約などを結んだ場合には、取り消す事が出来なくなります。

次回の第2講は、心裡留保(しんりりゅうほ)の講義となります。



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